G・ガルシア=マルケス「百年の孤独」感想、考察、ネタバレ [感想]

あまりにも壮大な内容のせいもあったり、最近賞の〆切が近かったり、祖父が息を引き取ったりして中々読む暇が無かった。それで本日やっとこさ読破いたしましので、感想を書きます。
百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))

この物語はブエンディア家の百年の孤独とマコンドの誕生と繁栄から滅亡までを余すことなく描いたものだ。とにかくその情報量に圧倒される。この物語は99%を決して明るくはない、孤独な生と死について語られている。物語は誰かが本当に語っているような語り口で進んでいく。誰もがこの作品を読破した後に思うことなのだろうが、結局のところ「愛」とはなんだったのだろう?著者のG・ガルシア=マルケスにとっての愛とは何だったのだろう?きっと、誰もがそう思うはずである。何故ならこの物語は「孤独」のアンチテーゼとして「愛」があるのは間違いないからだ。終盤で愛によってアウレリャノ(豚のしっぽ)が生まれた時に、やはり私は幸せな終わり方がアルキメデスの羊皮紙に書いてあるに違いないと思った。だがそれは簡単に裏切られ、結局マコンドは最後に人々からの記憶からも、蜃気楼のように消えて何も残らなくなってしまうのである。

最後の最後で裏切られるのは物語の定石なのだろうと、今書いていて思った。もしかしたら、G・ガルシア=マルケスは実のところこの物語に「愛」など、この物語の手品の小道具の一つに過ぎなかったのかもしれない―、というのも感覚的にではあるが、私はこの物語に幸せな終末を用意するのはやはり少し違うのではないかと思うのである。恋愛ものでもなければ正義の味方が現れる物語ではないのだ。そういった物語にはそういった物語の定石というものがある。恋愛ものでは疑いの要素がないとつまらないし、悪の敵が出てこない正義の味方の物語などつまらない。これはやはりそういった類の話ではなくてG・ガルシア=マルケスの作った物語なのだ。
物語を楽しもう、そしてそれを素直に受け入れてみると、私なりには辻褄が合うのである。著者は哀切、憎悪、愛、破壊など様々な要素を含めた物語をただ私達に提供してくれただけのような気がする。物語の結末が滅亡であるのも、それがもっともマコンドのあるべき形で、自然な流れであるように思える。逆に、もしもこの物語が「愛」によって結末を迎えたなら、私にとってむしろそちらの方がよくよく考えてみると不自然なのである(ただ、こういった不幸な結末が用意されているのは間違いなく物語の仕掛けの一つであり、読者はそれに自らその罠にはまり、もがくというのがこの物語の―、いやむしろ全ての物語に共通する楽しみ方である)。

だから、結局のところ、「私はこの物語を楽しめた」というだけで感想は終りなのだ。私は敢えてあまりここで何か特別な事を書くようなことはしない。ただ、どうにもこの作品で私が考えたこと(つまり愛と孤独について)はひっそりと私の胸の内に秘めさせて欲しい。きっとその答えを見つけ出すころには私はここで感想を書いていないだろうから。

結局マコンドは消え去ってしまったけれど、そこに我々は何もないとは思えない。何故なら我々はブエンディア家の百年に共に生きてきたからだ。そう感じさせるのである。
先日私は祖父を亡くし、もう血と肉は灰になったり蒸発したりしてしまって、残るのは骨のみだ。そこにはもういない。それは間違いないが、そこに何もないとは思えない。まさにこの感覚と似ていると思った。というか、同じだろうと思う。また、祖父は生前日記をつけていたらしいのだが、私はそれをたまらなく読みたくなった。だが、一体どこに行ってしまったのかその日記は消失していた。そこで、私は百年の孤独を読んでいると、ラテンアメリカに住んでいた祖父の日記でも読んでいる気分になってきた。本当にラテンアメリカに住んでいたわけではない、何が言いたかったかと言うと、それくらい私はこの物語を身近に感じ、ないはずのものをあると思いこまされた。
祖父は行年99でこの世を去った。百年に負けたが、匹敵するレベルである。私はこの物語を読んで人の一生のスケールの大きさを感じた。「あぁ、あの出来事があったのはもうそんなに昔か」と思うのである。

是非ともじっくり時間をかけて読んでほしい一冊だと思う。私はひどく遅読なものだから、この本を読むのにかかった時間をざっと計算してみた。一時間で20ページ弱ほどしか読めないので、473÷20=23.65時間かかった。ところどころ結構読み返したりしたので、多分30時間弱はかかっているのではないかと思う。それで原文がスペイン語の日本語訳なので、とっつきが悪くはじめは結構苦労しながら読んだ。けれども、読んでよかったとおもう一冊だったのは間違いない。
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