諏訪哲史「アサッテの人」考察、感想、ネタバレ [感想]

「アサッテの人 書評」で一番上に姿を現すそのページの書評はまず的をまるで捉えていない。とにかく敢えてそれを一番最初に批判したい。「つまり吃音もまた個性、というそういう話」と言っているのだが、まったくもってそう言う問題ではない。
この小説の素晴らしいところを私の言葉をもって全く持って力足らずではあるが稚拙にも語っていきたい。

アサッテの人 (講談社文庫)

あらすじ
主人公がどこか旅行(はっきり言ってしまえば失踪である)に行った伯父とその妻の朋子の草稿を小説として構成するという一風変わった視点からの物語である。主人公はその草稿から恐らくは反芻し、考察を重ねてこの物語を作り上げていく。
その叔父とは吃音に青春時代を悩まされ、しかし、それがある日ポンと直ってしまう。自由な言葉の世界に身を置いたかと思ったら、そこは「定型」しかない束縛の世界だった。これに叔父は悩まされる。じきに妻朋子を失い、袋小路に迷い込む。
たぶん、大体こんな感じ。

これから感想や考察を述べる。できたら、作品を読んでから私の感想やらを読んでいただくのが幸いかと思う。
敢えて私なりの表現でこれを読んでくださっている方にわかりやすく伝えたい。けれど恐らくこの小説は前述した書評を書いている方のように、わからない方には死ぬまでわからない小説なのだと思う。他にも書評を読んでいると「言っていることがなんか難しい」的な言葉がよく見受けられる。これはある種「読む小説」というよりは「感じる小説」なのだと私は思う。そしてその感覚が今までに感じたことのない全く新しい小説であったから、私はこの小説が大好きだとこの時点で言っておく。
「アサッテ」
この小説を読んで何が面白いのか。私は様々なところに魅力を感じたのだが、まずこの小説における「アサッテ」の概念だ。
そもそもこの小説の「アサッテ」を明確に表現するのは難しい。表現者ならばわかる人も、もしかしたらいるかもしれない。「アサッテ」とは今までこの世界で表現されたことのない「何か」なのだと思う。近い言葉を選ぶなら「個性」だろうか。しかし、個性は個性という言葉であって違う。「アサッテ」は「アサッテ」なのだ。僕は「アサッテ」という言葉を何で表現しよう。「アサッテ」は「感覚」や「感情」に近い。感覚的なものであるからある種の表現が難しいのかもしれない。
やはり私には表現が難しい。恐らくそれが正確にどこにあるか私自身が理解してないからだろう。しかし、私はあきらめない。私のできる限りのことをして「アサッテ」をなんとか表現してみようと思う。
因みに「アサッテ」とは「アサッテの方角」の「アサッテ」からきている。
「アサッテ」をなんとか考えてみる
人によって「アサッテ」の在り方は違うだろうと思う。とにかく、「定型を嫌う袋小路を彷徨うエネルギー」と言ったら伝わるだろうか。人によっては袋小路に入っていることにも気付かず「アサッテの人」となる人も多い。というかその方が多いのだろうな。「アサッテの方角」というから、既成概念から逸脱した想像力のようなもの。
とにかく「アサッテ」とは底しれぬエネルギーであると私は思う。
行き場のないエネルギー、アサッテの方角へのエネルギー……とにかくさっきからとにかく言葉を並べまくってみたが、やはり説明がつかないので諦めることにする。
この表現しようとする試みが「アサッテ」とも考えられる。
諦めて普通に感想書きます
最初は難しい本なのだろうかと思って読んでみたが、読んでいくうちにどんどん惹かれていった。笑えるところもあり、文章のテンポが非常にいいので、とにかくどんどん読み進めた。「アサッテ」とはなんなのか?それが読んでいるうちに明かされていく。読者は恐らくここで二分されていく。「アサッテ」に共感できるか、できないかだ。共感できた場合私のような気分になることは間違いない。「アサッテ」自体が抽象的な概念であるから、「感じること」で読み進めなければ上手くいかないのかもしれない。やはり結局のところ、この「アサッテ」が上手く理解できるかどうかにかかっているのではなかろうか。
そしてその抽象概念は創作したことのある人にはわかるかもしれない概念なのだ。そこで群像新人文学賞の選考委員は全員が表現者、創作者であるからして、それに大いに共感したのかもしれない。聞けば選考委員が全員太鼓判を押したそうな。私としてはそれが大いに理解できる。ハッキリ言って百点満点の作品だ。
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